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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

乳輪下膿瘍とは、どのようなものですか?

乳輪の下に膿がたまった状態です。

日馬幹弘先生
(東京医科大学第3外科講師)

乳輪下膿瘍は、乳輪の下にうみ(膿)がたまったもので、「急性乳輪下膿瘍」と「慢性乳輪下膿瘍」に分けられます。

急性乳輪下膿瘍は、化膿性の乳腺炎が悪化して膿がたまったものです。産後の授乳期に急性化膿性乳腺炎になると、そのうちの約25%が膿瘍に進行するとされています。しかし、こういったケースは膿瘍全体の10%以下にすぎません。つまり、急性の化膿性乳腺炎は、適切な治療を受ければ膿瘍をつくらずに治ります。
治療は、超音波で患部の様子を観察しながら、膿瘍を針で刺して確認した後、切開して膿を出します。切開しないで、刺した穴から膿を出して膿瘍内部を消毒液で洗浄するという一連の治療を繰り返す場合もあります。黄色ブドウ球菌や連鎖状球菌などによる細菌感染が原因なので、処置後には抗生物質が投与されます。

慢性乳輪下膿瘍は、中年の女性に多くみられます。乳輪の下にたまった膿を出すと症状は消えますが、長期間にわたって再発を繰り返す、治りにくい病気です。
陥没乳頭(乳頭が乳輪の下にもぐっているもの)の人に発症することが多く、なかにはろうこう(患部から皮膚に通じる穴)をつくることもあります。患部の炎症がおもな症状で、発熱などの全身症状がおきることはまずありません。膿を出して抗生物質を投与した後、炎症がおさまってから手術を行います。手術では、膿瘍の部位と病的な乳管、瘻孔をひとかたまりに切除します。

  • 乳輪下膿瘍の切除範囲
    乳輪下膿瘍の切除範囲

乳癌診療Tips&Traps No.9(2003年7月発行)Question3を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。