
手術前に行う治療にはどのようなものがあるのでしょうか?
がんの性格や進行状況によって術前化学療法が
広く行われています。
■向井博文先生(国立がんセンター東病院化学療法科)
■渡辺亨先生(浜松オンコロジーセンター長)
乳がんの手術前に行う術前療法は、抗がん剤を用いる化学療法を中心に1970年代に始まりました。当時は、手術ができない局所進行乳がんや炎症性乳がんがおもな対象でした。 80年代に入ると、手術ができる場合でも、手術前に乳がんを小さくして乳房温存術を可能にすることを目的に、術前化学療法が行われるようになりました。その後の研究や治療成績により、「乳がん細胞は、診断時にはすでに全身に広がっているので、なるべく早い時期から全身に効果の及ぶ治療を行うほうが有効である」との仮説に基づいて、さまざまな検討が行われました 。
90年代になると、「術前化学療法により乳がんの縮小が認められるなら、全身に広がったごく小さながん細胞の根絶にも効果があると予測することができる」と考えられるようになり、術前化学療法の効果により大きな期待が寄せられるようになりました。
最近では、腫瘍径が1〜2cmと小さい乳がんを対象に、さまざまな抗がん剤を組み合わせた臨床試験が行われています。その結果、術前化学療法によってがん細胞が縮小・消失すれば乳房温存率が高まり、また腋窩リンパ節への転移を予防する可能性が高くなることが明らかにされました。現在、術前化学療法は、乳がんの標準的な治療として、広く行われるようになっています。しかし、乳がんの種類や進行によっては術前化学療法の意義が乏しい場合があることもわかってきました。