速報!St.Gallen Conferences ビフォー&アフター
 
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editors' remarks

渡辺 亨 先生
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王メディカルプラザオンコロジーセンター長
渡辺 亨 先生 私は、1992年からSt.Gallen Conferenceに参加している。1998年までは、パネリストの数も15名前後、討議すべき内容もそれほど多くはなかったので、土曜日の午前中のセッションで、壇上のパネリストの発言や、やりとりを聞きながら、書記を務める司会者のDr. GoldhirschがOHPシートに記載する決定事項を確認することで、コンセンサスの全容を把握できた。2001年からは、OHPの代わりに、PowerPointが初めて使用されたが、Dr. Goldhirschもその操作になれておらず、パネリストの討議内容をリアルタイムで記録することができず、聴衆はスライドに映し出される稚拙な操作にいらだちをおぼえた。
 2003年には、進行役の司会者がDr. Gluckから、Dr. Woodに変った。進行になれていないDr. Woodは討議をまとめきれず、化学療法の問題など、討議できなかった課題が多く、聴衆の間には、消化不良の感が残った。9月にJCOで公表された学会報告でも、2001年とほとんど変更のない内容に失望した専門家も多い。

 その反省からか、Dr. John Gluckが司会役に復帰、Dr. Woodは、パネリストの一人に戻った。また、今回からアンサーパッドが導入され、ある程度、理路整然とコンセンサス形成に向けての討議は進められた。しかし、どうしても準備不足の感は否めない。事前にパネリストは一度も集合することはないそうだ。あらかじめ質問項目は配布されたようだが、その場で質問内容がころころと変るようなお粗末さである。世界から4,000人以上もの乳癌臨床家がこのコンセンサス会議を傍聴するために集まっているのだから、もう少しきちんと準備をしなくてはだめだ。
 また、世界のオピニオンリーダーを自他ともに認める、ベルギーのMartine Piccartは、壇上にその姿を見せなかった。プログラムには彼女の名前が記載されていたが、急用ができた、とのアナウンスだけで、壇上には代役が座っていた。聴取の大部分は彼女の発言に注目しているが、同時に、ドタキャンの女王としての前科もあるだけに、いろいろと勘ぐってしまう。もし、個人的な妄動で不適切な行動を取っているとすれば、オピニオンリーダーたる資格は返上願いたいものである。

 今回の4日間のカンファレンスでは、われわれはこのような速報を出すために、事前からかなりの準備をし、会期中もたびたび集まり、報告内容や表現などについて、コンセンサス形成を重視した。かつては「欧米出羽守(おうべいではのかみ)」と、欧米では欧米では、とばかり言うな、とか、日本人には通用しない治療である、など、日本人特殊論に逃げ込む偽オピニオンリーダーが少なからず存在した。現在でも、その末裔はあちこちに見え隠れしているが、時代は地球規模で進んでいる。国際合意形成のパネリストの中に、日本人が参加する日も近い。その日に備え、今回の合意内容を、患者さんの安心と安全につなげられるよう、日々の診療、臨床研究、英会話の勉強に励みたいものである。

相原智彦 先生
関西労災病院外科医長
相原智彦 先生 今回のコンセンサス・ミーティングは、リスクカテゴリーの改編に有用なエビデンスについてのレクチャーがほとんど見当たらなかったにも関わらずHER2と脈管侵襲が新しい因子として加わりそうであったこと、またCALGBが行った一連の臨床試験の結果にも関わらずパネルの半数近くがn+でもタキサンを積極的に推奨せず、dose denseにいたっては支持する意見が10%にも満たなかったことなど、やや意外な展開となった。

 閉経後ホルモン感受性乳癌の治療では、アロマターゼ阻害薬を支持する意見が多くなってきているものの、至適開始時期や至適投与期間が明確でなく、タモキシフェンについてもその意義は未だ失われていないという印象であった。副作用では、タモキシフェンとレトロゾールを比較したBIG-FEMTA試験の中間解析結果で、乳癌と関連のない死亡例がレトロゾールで多く、特に心血管系関連の死亡がタモキシフェンの2倍に上っていたことが報告された。ATACの最近のアップデートでも、乳癌関連死亡はアナストロゾールの方がタモキシフェンよりも低いものの全生存率がほぼ同じであり、これも乳癌と関連のない死亡がアナストロゾールで多い可能性をうかがわせる結果である。アロマターゼ阻害薬に関連する副作用を長期にわたって見守っていくことの重要性を再認識させられた。

岩田広治 先生
愛知県がんセンター乳腺外科部長
岩田広治 先生 マイナス10度を越す寒さと、一面の雪景色のなか、St. GallenにてPrimary Therapy of Early Breast Cancer 9th International Conferenceは開催された。会議全体を通じての方向性は、治療方針の選択がより個別化されてきた印象である。特に、報告されたばかりのOncotype DXの話題が講演のみならず最終日のディスカッションでも取り上げられていた。また、すでにヨーロッパを中心にしてTrans Big NetworkのMINDACT Trialとして70 gene profilingで層別した臨床試験が、US oncologyを中心にしてOncotype DXを用いて層別した臨床試験が計画、開始段階であることに、あらためて欧米の取り組みのスピードに驚かされた。

 具体的な治療方針は、会議最終日のInternational Consensus Conferenceで検討された(今回はじめてボーティングシステムが導入された)。リスクカテゴリーにextensive vascular invasionやHER2の評価が追加されたことは大きな変化であり、従来のn0 high riskとホルモン感受性のリンパ節転移1-3個を同じカテゴリーに含めるなど、予後での層別よりも治療の反応性を重視した分類になった印象を受けた。なかでも、ホルモン感受性に関して従来の「あり」「なし」の2つの分類から、ホルモン感受性が不明確な群(uncertain hormone responsiveness, あるいはhormone responsiveness with doubtという表現が使われていた)が追加されたが、この定義が明確ではなく今後実際の運用で考えるべき点は多い。
 治療薬剤の選択に関しては、予想されていた閉経後患者へのアロマターゼ阻害剤の導入、リンパ節転移陽性患者群へのタキサン治療の追加が取り入れられたことも大きな変化であった。しかし時間に制限がありprimary systemic therapy(chemotherapy or hormone therapy)の位置づけや、primary radiotherapyの方向性などの議論がなされなかったのは残念であった。今後の追加検討の後の6月のJCO誌への掲載が待たれる。

中村清吾 先生
聖路加国際病院外科医長
中村清吾 先生 本年も厳寒の地、スイスのSt. Gallenにて、乳癌術後補助療法に関するコンセンサスミーティングが開催された。今年は、特に閉経後乳癌患者に対するアロマターゼ阻害剤の位置づけや、リンパ節転移陽性患者に対するタキサン系薬剤の適応など大幅な変更が予想されたために、4,000人を超える参加者が世界各国から集まった。
 ガイドライン策定の原則は、ハイレベルのエビデンス(大規模臨床試験の結果)に基づくことに間違いはないが、実際の治療は、QOLや医療経済、あるいは宗教観、個人の価値観などを加味して選択されるため、議論を重ねたコンセンサスの醸成が必要となる。限られた時間での討論のために、アロマターゼ阻害剤、タキサンともに選択枝の1つに加わったことに間違いはないが、その明確な使用法についてはまだ議論の余地が残されている。今後、ASCOやNIHなどの見解が注目されるところである。

穂積康夫 先生
自治医科大学外科学講師
穂積康夫 先生 厳寒のスイスで行われるこのカンファレンスには2001年から参加しているが、年々参加者が増え、とうとう4,000名を超えてしまった。広い会場でも収容しきれなく、隣や階下にビデオルームを設置して凌いでいたが、次回以降、さらに増えたらどうなるのだろうとの要らぬ心配をしてしまった。
 さて、コンセンサス・ミーティングではリスクカテゴリーの大幅な改訂がなされた点がまず重要である。リンパ節転移陰性と陽性といった区別をせず、n0ハイリスクとn(+)1-3個を同じリスクカテゴリーに含めた。実際の治療に則した分類となり、従来のカテゴリー分類よりすっきりしたのではないだろうか。ただ、HER2はともかく、脈管侵襲の有無が新しい因子として加わった点は、唐突である印象が否めない。脈管侵襲に関しては、今後臨床の場で混乱を招きかねないと思われ、乳癌学会の病理部会等で標準化を行う必要があろう。
 治療に関しては、大方の予想通り、閉経後患者へのアロマターゼ阻害剤の導入、リンパ節転移陽性患者群へのタキサン治療の追加が取り入れられた。しかしその使用に関しての詳細を検討するにはなにぶん時間が短すぎ、十分な討議はなされなかった。最終的には夏頃にJCOに発表される論文を参照する必要がある。

  ミーティング全体を通して感じられたことは、(私だけかもしれないが)米国とヨーロッパとでは、“欧米”という一括りでは決して表現できないほど、考え方には差があるということである。日本ではSt. Gallenでの発表を金科玉条のように捉えている感がある。NCCNやASCOのガイドラインも参照の上、日常臨床に取り入れていくべきであろう。

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