TOPコンセンサス会議 速報レポートReportCommentSession SummaryレポートOpening AddressSession1Session2Session3Session4Session5Session6Session7Session8Session9Session10帰国後座談会2007年のSt.Gallenを先生方に振り返っていただきますSt.Gallen Conferences 2005
Session Summaryレポート

会期中1〜3日目までに発表されるセッション1〜10では、ここ2年間の知見がレビューされる。これこそが、最終日のコンセンサス会議で示される治療指針へ続く“pathway”であり、それぞれのセッション内容の理解によりその先にある治療戦略がみえてくるともいえる。今回は、編集委員の先生方に、それぞれのご専門の立場からセッションをご担当・ご解説いただいた。


サマリー執筆:穂積康夫(自治医科大学乳腺・総合外科)
 セッション6は放射線治療の3題と、日本の紅林先生による人種間の悪性度の違いの発表の計4演題であった。

セッションサマリー

[S22] State of the art of post-mastectomy radiation therapy (PMRT)
Jay R. Harris (Dana-Farber Cancer Institute/Brigham and Woman's Hospital/Harvard Medical School, USA)
 DFCIの放射線科医であるJay H. Harrisは、まず2005年12月にLancetに発表されたEBCTCG2005のメタアナリシスの結果をReviewした。放射線治療が局所のコントロールだけでなく生存にも寄与しているという結果であった。過去の個々の試験がnegativeな結果に終わったのは、症例数が15年間で5%の生存率の向上を90%のパワーで検証するのに不十分であるからであり、それを解消するためにメタアナリシスの手法が用いられている。EBCTCGでは42,000例以上の症例を検討し、放射線治療はすべてのシチュエーションでLocal Regional Recurrence(LRR)を減少させることが確認された。さらに、局所再発を減らすことは長期生存の向上をもたらし、5年のLRRの減少は15年後の死亡の減少をもたらす。BCSではNの状況にかかわらず、また乳房切除の場合はN+のときに5年のLRRと15年の死亡率が減少する。ただしN-での乳房切除の場合、5年のLRRは減少させるが15年の死亡率の減少は認められない。計算すると5年での4例のLRR減少は15年での1例の乳癌死亡を減少させることになる。
 その理由としてLocal Recurrence(LR)は原発巣よりも悪性度が高いことがしばしば認められ、LRと遠隔転移巣は似ているが、原発巣とはClonalityが違うからであると推測している。一方で、全身治療はLRを減少させるので効果的な全身療法はLRRを防ぐためにも非常に重要である。すなわち、N+の乳房切除後のRTはLRRの減少に非常に有効であるが、化学療法やホルモン療法を行わなければ、乳癌死亡を減らすことはできない。なお、RTの合併症として古い報告では心臓死が増えることが強調されていたが、最近の放射線照射の進歩で心臓へのdoseはかなり減少した。
 総括として、乳房切除後の照射は10%以上のLRRを減少させる。リンパ節転移4個以上の患者には照射を行うべきなのは明白である。ただし、1-3個の場合は依然として不明である。

[S23] Partial breast irradiation: Ready for routine?
Roberto Orecchia (European Institute of Oncology, Italy)
 次の演題はEIOのRoberto Orecchiaによるpartial breast irradiation (PBI)についての発表であった。彼もまた、最初に2005年のEBCTCGの結果を引用し、放射線治療が局所再発のみならず死亡率も減少させることを示した。連日の5〜7週間の標準的な放射線治療の代わりにさまざまなPBIが開発されており、2002年米国のメリーランド州Bethesdaではワークショップも開催されている。PBIとは、摘出部とそれに隣接する組織にのみ照射されることで、その方法にはIOERT、ELIOT、TARGIT、HDR/LDR-BRT interstitial、HDR/BRT balloon(Mammosite)、External Beam RT/ 3D-CRT/ IMRTなどさまざまなものがある。
 最初にChristie HospitalのBreast Conservation trialが行われ、全乳房照射(WF)と切除部のみの電子線照射(LF)を比較したところ、結果はLF<<WFだった。その後、上記のさまざまな方法が試験され、また現在試験中でもあり、それらについてのReviewが行われた。その内容は、いくつかのPilot試験や小規模の試験では満足すべき結果であり、それらを基にしてMammositeのAm Soc Breast SurgeryでのRegistry試験、HDR/LDR-BRT interstitial、HDR/BRT balloon(Mammosite)、External Beam RT/3D-CRT、標準的なWBRTとの比較試験であるNSABP B-39/ RTOG 0413 study、IORT vs. WBRTでのTARGIT (TARGeted Intraoperative radio Therapy)、ELIOT randomized trialの大規模多施設phase試験が進行中であり結果が待たれる状況である。
 最後に、PBIの結果は概して満足すべきものであるが、テクニック、スケジュール、患者選択(クライテリア)、治療領域などがそれぞれの方法で異なっているため、結果の解釈に際して問題がある。しかし、臨床的に患者に利点が多いので、実臨床において厳密な適応を決めて行うことが望ましいと締めくくった。

[S24] Systemic adjuvant therapies and radiotherapy to the conserved breast: Strategies revisited
Harry Bartelink (Netherlands Cancer Institute, The Netherlands)
 3番目の演題はNetherlands Cancer InstituteのHarry Bartelinkの発表で、乳房温存手術後の全身療法と放射線治療というテーマで、5つの項目に分けてReviewを行った。
 最初にBCS後にRTを行うことはNにかかわらずLRRと死亡を減少させるという2005年のEBCTCGの結果を引用し、局所コントロールと生存への放射線治療のインパクトを示した。次に全身療法の局所コントロールへのインパクトという項目で、EORTCやNSABPのいくつかの試験の結果からは放射線治療後の全身療法はLRRを減少させることができることを示した。しかし、症例によっては全身療法が放射線治療の代わりになるのではないかという点では現時点では十分なデータがないと論じた。
 次に放射線治療と全身療法の順番について、どちらを先に行ってもDFSには差がない、しかしRTの前にCTを行った場合、6〜16%LRRが増え、術前化学療法の場合もLRRが増えると述べた。放射線治療によりtrastuzumabの心毒性が増えるかどうかの疑問について、N9831の結果からは心臓毒性が増えるという結果は認められなかった。おそらく心臓や肺への照射量は極めて少ないことが予想される。ただ、RT中の同時投与の場合、厳重なフォローが望まれると述べた。
 最後に、最近の照射テクニックの進歩で、放射線照射による毒性は軽減することができることをシミュレーションCTの画像をもとに示して発表を締めた。

[S25] The diversity of small tumors around the world, Are there implications for local and systemic therapies?
Junichi Kurebayashi (Kawasaki Medical School, Japan)
 このセッション最後の演題は、日本人で初めての口演発表者である川崎医科大学乳腺甲状腺外科の紅林淳一先生の講演で、これまでの3題とは趣を異にし、人種間による乳癌亜型の発現と予後の違いという題の発表であった。
  まず、人種間の生存率の違いは社会経済と生物学的な違いによるものの可能性があり、この生物学的相違は、遺伝子と環境因子によって影響されていると推論した。その根拠として、若い黒人女性はbasal-likeが多く、luminal-Aが少ないために予後が悪いと報告された。その反面、ハワイの日本人女性の乳癌は有意に予後良好であり、このことは日本人女性乳癌の生物学的特性が良好であることを示唆している。これを検証するために2000-2003年における多施設からの乳癌組織793例の免疫染色(ER、PR、HER1、Cytokeratin 5/6、HER2)を行った。luminal-Aが63%、luminal-Bが20%、HER2が7%、basal-like8%であり、basal-likeはこれまでの報告通りに、予後が悪い亜型であった。しかし、非黒人と黒人の乳癌亜型を調べた米国での報告と比べると、luminal-Aが多く、basal-likeは少なかった。triple-negativeの症例でも、英国、米国、韓国の報告よりも有意に少なかった。その結果、日本人女性の乳癌は他国と比して予後が良い可能性があると論じた。選択した症例の問題はあるにしても、日本人と欧米人の予後の違いを科学的に検証した意義のある発表であった。