TOPコンセンサス会議 速報レポートReportCommentSession SummaryレポートOpening AddressSession1Session2Session3Session4Session5Session6Session7Session8Session9Session10帰国後座談会2007年のSt.Gallenを先生方に振り返っていただきますSt.Gallen Conferences 2005
Session Summaryレポート

会期中1〜3日目までに発表されるセッション1〜10では、ここ2年間の知見がレビューされる。これこそが、最終日のコンセンサス会議で示される治療指針へ続く“pathway”であり、それぞれのセッション内容の理解によりその先にある治療戦略がみえてくるともいえる。今回は、編集委員の先生方に、それぞれのご専門の立場からセッションをご担当・ご解説いただいた。


サマリー執筆:相原智彦(医療法人啓明会相原病院乳腺科)
セッション7は、Adjuvant systemic therapies I :Specific targetsをテーマとして、日常診療に臨床試験のデータをどうすれば生かすことができるのか、アロマターゼ阻害薬の適応、卵巣機能抑制の有用性、化学予防や抗エストロゲン剤の耐性メカニズムなどについての興味深いレクチャーが行われた。

セッションサマリー

[S26] Using clinical trial data to tailor adjuvant treatments for individual patients
Richard D. Gelber (Dana-Farber Cancer Institute, USA)
 現在、テーラーメイド医療の重要性が盛んに喧伝されているが、臨床試験のデータをもとにして個人に合わせた術後療法を考えるためにはどうすべきかについて、Dr. Gelberが発表を行った。
 まずBIG 1-98試験を例にとり、ER/PgRのセントラルレビューを行うと、個別施設では陽性であった症例のうち2.2%が受容体陰性と診断され、これらの予後はタモキシフェン群でもレトロゾール群でも同様に、受容体陽性症例より相当悪いことが示された。一方、セントラルレビューにより受容体陽性が確認された症例では、レトロゾール群のDFSのハザード比がITTの0.81から0.75に改善され、病理組織学的検討を正確に行うことの重要性が強調された。
 HER2陽性乳癌に対して化学療法後にトラスツズマブを投与するHERA試験のアップデートから、1年間のトラスツズマブの投与により、無投与群より3年DFSが絶対値で6.3%、ハザード比で36%改善されることが報告された。サブグループ解析では、閉経前乳癌で効果が高い傾向にあったが、国(地域)、リンパ節転移の数では、効果に差がなかった。再発抑制効果は当初2年間が大きく、2年目以降では非投与群との差がほとんどなかった。ホルモン受容体陰性症例ではこの傾向が顕著である一方、陽性症例では2年目以降3年の時点でも再発抑制効果が持続していた。この結果だけから結論づけるのは危険だが、ホルモン感受性によってハーセプチンの効果の現れ方が異なる可能性を示唆する興味深い知見である。
 現在、化学療法レジメンの選択は、主に腋窩リンパ節転移の状況でなされているが、有用なバイオマーカーがあれば、より効果的にレジメンの選択を行うことができる。術後療法としてCEFとCMFを比較したMA5試験の症例を、アンスラサイクリンの標的となるTOP2A遺伝子の増幅の有無で検討したところ、TOP2A遺伝子の増幅がみられた症例ではCEFのDFSのハザード比が0.42であったが、遺伝子増幅がない症例ではCEFとCMFで差がなかった。TOP2A遺伝子の増幅の有無をバイオマーカーとして、効果が高いが副作用も強いCEFを行わなければならない症例と行わなくてもよい症例を選択できる可能性が示唆された。また、35歳未満のホルモン感受性症例では、化学療法単独では35歳以上のホルモン非感受性症例よりも再発のリスクが2倍になることが示された。こういった症例に対して、卵巣機能抑制を含めたホルモン治療の重要性が強調された。
 最後に、ER/PgRやHER2などといった予測因子の正確な評価、特定の臨床シナリオに特化した臨床試験を行うこと、サブグループ解析を積極的にしかし注意深く行うこと、「平均の」という結果は個人に対する治療には不十分であること、トランスレーショナルリサーチが不可欠であることを述べて、セッションを締めくくった。

[S27] Application of aromatase inhibitors in endocrine responsive breast cance
Paul E. Goss (Massachusetts General Hospital Cancer Center, USA)
 ホルモン受容体陽性乳癌に対するアロマターゼ阻害薬の適応について、Dr. Gossが発表を行った。
 まず、現時点で行われている臨床試験のアップデートとして、タモキシフェンとレトロゾールの比較であるBIG1-98で、レトロゾールがタモキシフェンと比較して、リンパ節転移の有無、化学療法の有無、PgRの発現状況によらず、DFSの改善効果がみられることを示した。次いで、タモキシフェン5年投与終了後のレトロゾールの延長投与の効果をみたMA17の発表を行い、レトロゾールの投与期間が長くなるほどDFSの改善効果が高くなることを示した。また、試験が早期終了したためプラセボ群の約3/4が開錠後にレトロゾールを服用したにもかかわらず、DFSのハザード比が改善していることを示した。
 現在、アロマターゼ阻害薬は3種類あり、投与方法としてアップフロントでの使用、タモキシフェン投与後に2〜3年で切り換え、タモキシフェン5年終了後の使用、という使用法がある。至適薬剤・至適投与期間を明らかにするため、現在行われている試験が紹介された。
 アロマターゼ阻害薬による予後および効果予測因子として、ER/PgR、HER2、Oncotype DX、MGH 2-gene signature、ファーマコジェノミクスが挙げられた。ER/PgRがタモキシフェンと比較してアロマターゼ阻害薬の効果予測因子になるかどうかは報告によって一致せず、HER2も同様である。ファーマコジェノミクスとしては、タモキシフェンの代謝に関わるCYP2D6の多型を挙げた。
 現在のアロマターゼ阻害薬の治療効果を超えるために、最適化・治療期間の延長などのストラテジーをとる必要があること、ホルモン治療に最適な症例を同定すること、ホルモン治療と新しい分子標的治療を組み合わせることでより効果が高まる期待があることを述べた。

[S28] Ovarian function suppression in the adjuvant program
Nancy E. Davidson (The Sydney Kimmel Cancer Center at Johns Hopkins, USA)
 2007年における卵巣機能抑制療法の意義について、Dr. Davidsonが発表を行った。
 卵巣機能抑制療法の有用性を検討した臨床試験に含まれた、閉経前乳癌12,000例を対象としたメタ解析がEBCTCGにより2006年に行われ、20年で4.2%の絶対値でのDFSの改善が報告された。化学療法を併用した場合にはベネフィットが見られない一方、併用しない場合には11.5%の絶対値の改善が見られた。しかしながら、このメタ解析にはホルモン受容体陰性症例が相当の割合で含まれることが、大きな弱点である。
 そのため、つぎに2006年のSan Antonio Breast Cancer SymposiumでDr.Cuzickが発表した、ER陽性症例に限ったLH-RHアゴニストのメタ解析のデータ(n=9,000)を紹介した。この解析では、DFSはLH-RHアゴニスト単独時にはハザード比が0.72、化学療法併用時にはハザード比が0.88とどちらも有意に改善されていたことが特筆される。タモキシフェンとLH-RHアゴニストの併用は、タモキシフェン単独と比較してハザード比が0.85と有意ではないが改善する傾向がみられた。化学療法単独(大部分はアンスラサイクリンを含まず、タキサンはまったく含まれていない)とLH-RHアゴニスト単独の効果は、同等であった。
 ホルモン感受性閉経前早期乳癌のホルモン治療としては、タモキシフェンが標準であること、特定の女性にとってLH-RHアゴニストとタモキシフェンの併用は合理的な選択肢となりえること、化学療法後の卵巣機能抑制の重要性、卵巣機能抑制とアロマターゼ阻害薬の併用は現在臨床試験で検討中であることを述べた。閉経前乳癌における卵巣機能抑制の意義を考えるうえで、示唆に富むセッションとなった。

[S29] Optimizing treatment and prevention of breast cancer: Time for a change
V. Craig Jordan (Fox Chase Cancer Center, Medical Sciences, USA)
 化学予防とホルモン療法に関する発表をDr. Jordanが行った。
 現時点で、乳癌の化学予防としてタモキシフェンとラロキシフェンが使用できることをまず示した。次いで骨粗鬆症の治療対象となる50万人の女性に対してビスフォスフォネートを投与した場合、21,000人の乳癌が発生し、HRTを行った場合にはこれが32,230人に増加するが、ラロキシフェンを使用した場合には7,000人にまで減少することを示した。
 多数の臨床試験の結果から、長期間のホルモン療法により乳癌患者の予後の改善が得られることが証明される一方、その結果として薬剤耐性を生じることが懸念される。エストロゲンにより誘導されるアポトーシスのメカニズムを理解することで、ホルモン療法への耐性を解除し、ホルモン療法を再び導入できる可能性があることが指摘された。