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Q&A  No.7掲載(2002年12月刊行)
【疾患全般-5】

男性の乳腺疾患とその診断・治療について教えてください。

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群馬大学医学部救急医学教授
飯野佑一
群馬大学医学部第二外科
飯島耕太郎
一般の方への記事
男性にも乳房の病気はありますか…
 男性の乳腺疾患として外来でよく遭遇するものに女性化乳房症があり、ごく少数ですが乳癌も時として見られます。いずれも患者さんが乳房腫瘤を自覚して来院されることが多いのですが、癌との鑑別に苦慮する場合も少なくありません。
【女性化乳房症】
 女性化乳房症は、両側もしくは片側の乳腺が一時的に肥大して、乳頭、乳輪下に腫瘤様に触れるもので、エストロゲンの過剰状態のため発症すると考えられています。その要因として、思春期の一過性のもの、薬剤性のもの()、他の疾患に伴うもの(肝臓・副腎・甲状腺・泌尿器等)などがありますが、原因のはっきりしないものも多く見られます。診察においては問診をていねいに行い、合併症の可能性・服薬の有無とその種類などを詳しく聴取することが大切です。
表 女性化乳房症を来す可能性のある薬剤
 女性ホルモン剤
 強心薬(ジギタリス)
 降圧利尿薬(スピロノラクトン)
 降圧薬(レセルピン、メチルドパ、ニフェジピン) 
 抗結核薬(イソニアジド)
 抗潰瘍薬(スルピリド、シメチジンなど)
 抗アレルギー薬(オキサトミド)
 抗けいれん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)
 胃腸運動賦活薬(ドンペリドン、メトクロプラミド)
 抗真菌薬(グリセオフルビン)
 向精神薬
■診断
 女性化乳房症は、比較的広い年齢層にみられ、乳頭・乳輪下の腫瘤や疼痛(自発痛・圧痛)を主訴として来院することが多く見られます。触診所見として、多くは両側の乳頭・乳輪を中心とした境界の不鮮明な硬結として触れますが、片側にしか認められないものや、また比較的境界明瞭で弾性硬な扁平腫瘤として認められるものもあります。超音波検査では、乳頭付近の境界不明瞭な低エコー像として見られることが多く、マンモグラフィでは乳頭下に広がる乳腺の肥大が腫瘤様濃厚陰影として見られます。
 触診や画像上腫瘤様であるものは注意が必要で、また中〜高年齢者の場合には、安易に女性化乳房症と決めつけずに、可能な限り穿刺吸引細胞診あるいはcore needle biopsyによる確定診断を行った方が望ましいと思われます。この際、初回の細胞診・組織診で悪性像がないとされた場合でも、一定期間は外来で経過観察を続けることが肝心です。
■治療
 原則的に経過観察のみで薬物療法などの治療は不要ですが、他に使用している薬剤の影響が推測される場合はそれらの一時的投与中止を考慮したり、また他疾患に伴うと思われるものではそれらの精査(例えば肝機能など)を行います。疼痛が強いときには、状況によって非ステロイド系消炎鎮痛薬を使用します。以前使用されていたエピチオスタノール(注射)は生産中止となり、現在は用いられていません。薬物療法などで改善しない場合や、乳頭乳房の“膨らみ”について患者さん本人が要望する場合には、外科的に乳腺切除を行うこともありえます。
男子乳癌
 男子乳癌は全乳癌の約0.5〜1.0%を占め、発生年齢は一般の乳癌より高いとされています。また男性の場合、女性と比べて元来の乳腺が痕跡的で小さいことや皮下脂肪が少ないことから、皮膚や筋膜へ浸潤しやすく一般の乳癌に比べてやや進行したものが多いともいわれています。
■診断

 女性化乳房症と異なる点としては、疼痛を伴うことはあまりなく、片側の乳房の乳頭乳輪から偏心性に位置する腫瘤としてよく認められます。また乳頭の変形・膨隆(図1)などを認めることがあり、少数ですが乳頭分泌や皮膚潰瘍などを伴うこともあります。腋窩リンパ節の腫脹の有無やその硬さも診断の一助となります。
 女性の乳癌と同様、超音波検査(図2)では不整形で内部不均一低エコーの腫瘤として認められたり、マンモグラフィ(図3)では不整形な濃厚腫瘤陰影やspiculaを伴うもの、また石灰化を伴うなど、多くは一般的な乳癌の所見を認めます。この際注意すべきことは、一般の乳癌としては画像上悪性をあまり疑わないものであっても、男性の場合でそれらの所見があれば癌の可能性を考慮することが肝心です。原則的に穿刺吸引細胞診もしくはcore needle biopsyを行い、確定診断を行います。

図1 男子乳癌の局所所見
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図2 男子乳癌の超音波検査所見
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図3 男子乳癌のマンモグラフィ所見
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■治療
 治療は通常の乳癌と同様に行います。美容的な要求がないことが多いため、一般的には外科的に乳房切除(胸筋温存乳房切除術)を行い、その後、エストロゲンレセプターの状況・リンパ節転移の状況・核異型度などからSt. Gallenのrecommendationに準じて補助化学・内分泌療法を行いますが、基本的には女性乳癌と同様に取り扱います。この際に、血中のエストロン、エストラジオールなども測定しておくことが、内分泌療法の薬剤選択の一助になり望ましいと思われます。
 男子乳癌の多くはエストロゲンレセプターが高率に陽性で、内分泌療法が有効なことが多く、また男性であるため内分泌環境として一般的にアンドロゲンが高くなっています。そのことから、男子乳癌に対する内分泌治療としては、一般的にタモキシフェンが用いられていますが、アンドロゲンからエストロゲンへの生成経路をブロックするアロマターゼ阻害薬の投与もさらに理にかなっていると思われます。
■おわりに
 男性が乳腺疾患になったときに、いざ乳腺外科に行くとなると躊躇してしまい、一般外科の先生がまず対応するケースが多いと思われます。今まで記載したとおり、男性の乳腺腫瘤の多くは女性化乳房症で問題のないものですが、診断に不安がある場合は迷わず乳腺専門医にコンサルトすべきと思います。
 
線維腺腫は放置するとどうなりま… 再発乳癌治療の基本的な考え方を…
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