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Q&A  No.2掲載(2001年9月刊行)
【診断・検査-1】

マンモグラフィにおける被爆について、患者さんにどのように答えたらよいですか?

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東京都立府中病院診療放射線科
角田博子
 被曝という問題は、マンモグラフィには常についてまわる問題です。しかし患者さんから、「いまの撮影でどのぐらい危険なのですか?」と問われたとき、問題ないとはいえても、それ以上の詳しい説明ができないというのが多くの医師の現状ではないでしょうか。
■確定的影響と確率的影響
 放射線被曝を受けた場合、常に「確定的影響」と「確率的影響」の2 つを考えなければなりません。
 確定的影響とは、ある値(しきい線量)を超えて被曝した場合、必ず発生する影響のことです。たとえば、精巣が1回に3.5~6Gyの被曝をすると永久不妊となり、水晶体では5Gyで白内障が生じます(表1)。しきい線量以下の被曝であれば、これらの危険を完全に防止することができます。これに対して、確率的影響にはしきい線量がありません。ごく少量の被曝でも、可能性は非常に低いものの癌発生のリスクを負うことになるのです。宝くじを買うとき、まさか皆さんは1等があたるとは思わないでしょう? しかし、低いながらもあたる可能性を手に入れたことになるのと同じなのです。
表1 放射線被曝のリスクとマンモグラフィ撮影時の被曝
 確定的影響管内型
 臓器 影響  しきい線量 
 精巣 一時的不妊
永久不妊
0.15 Gy
3.5~6 Gy
 卵巣 永久不妊 2.5~6 Gy
 水晶体 水晶体混濁
白内障
0.5~2 Gy
2~10 Gy
 造血組織 機能低下 0.5 Gy
 確率的影響
 しきい線量をもたない。影響は癌や遺伝的影響
 ★マンモグラフィで乳房が浴びる吸収線量   1~3 mGy
■マンモグラフィでどのぐらい被曝するのか?
 米国放射線専門医会は、1方向あたり吸収線量で3mGy以下という勧告を出していますが、これが現時点での日本での基準となっています。最近の撮影技術をもってすれば、1~2mGy以下で撮影できることがほとんどです。これを実効線量で示すと、0.05~0.15mSvの被曝があるといわれています。数字だけいわれてもピンときませんが、表2を見てください。私たちは、まったく知らない間に年間約2.40mSvの自然放射線を浴びています。また、東京からサンフランシスコまで飛行機で移動する間に受ける自然放射線は0.038mSvというデータもあります。さらに、地域による自然放射線の差も、岐阜では年間0.78mSv、神奈川では0.42mSvと意外と大きいのです。
 これらのデータをマンモグラフィでの被曝の値と比べてみてください。確率的影響は決して生じない量であることがおわかりいただけると思います。確率的影響は0ではありませんが、自然放射線や飛行機旅行と比べてもその線量は多くありません。もちろん、だからといってむやみに撮影していいということにはなりませんが、不必要に恐れる必要もないということです。
 あなたは、被曝を恐れて出張をとりやめますか?
表2 自然放射線などからの被曝とマンモグラフィによる被曝
 自然放射線
 宇宙線 0.38mSv
 大地から 0.46mSv
 体内放射能 0.23mSv
 空気中ラドン 1.30mSv
 合計  約2.40mSv/年 
 飛行機旅行による被曝
 東京― サンフランシスコ 0.038mSv
 ★マンモグラフィでの被曝(実効線量)  0.05~0.15mSv 

 

 
 参考文献
1) 大内憲明編:マンモグラフィによる乳がん検診の手引き―精度
管理マニュアル第2版:日本医事新報社, 東京, 2001
2) 草間朋子, 古田勝正:医療従事者のためのICRP勧告―ICRP
1990年勧告―:財団法人結核予防会, 東京, 1992
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