| 代表的な抗エストロゲン剤であるタモキシフェン(TAM)は、転移性乳癌のほか、術後補助療法としての効果が多くの臨床試験により証明されており、標準的なホルモン療法として広く使用されています。しかし、タモキシフェンの投与により子宮内膜癌の発生頻度が高まることが報告され、その安全性を疑問視する声も聞かれるようになりました。そこで、術後補助療法におけるTAMのベネフィット(再発抑制効果)とハーム(子宮内膜癌の発生)を明らかにし、術後ホルモン療法としての同剤の有用性を考察します。 |
| ※ハーム:harm |
| ■TAMによる再発抑制効果と子宮内膜癌の発生頻度 |
乳癌術後補助療法の有用性を検討したEBCTCG(Early Breast Cancer Trialists’Collaborative Group)のメタアナリシスによれば、ER陽性患者では、腋窩リンパ節転移個数や閉経状況にかかわらず、TAM5年投与により再発リスクは約40%減少することが示されています(図1)。これに対し、ER陰性患者では、投与期間にかかわらず再発抑制効果はほとんど認められません(図2)。
一方、このメタアナリシスでは、TAM投与により、子宮内膜癌の発生頻度が3倍に増加することも明らかにされました。そこで、術後補助療法としてのTAMの有用性を客観的に判断するために、ベネフィットとハームを定量的に比較してみることにします。 |
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図1 ER陽性患者における再発率 |
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| EBCTCGのデータより作図 |
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図2 ER陰性患者における再発率 |
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| EEBCTCGのデータより作図 |
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| ■ハームをはるかに上回るベネフィット |
表は、EBCTCGの成績をもとに、ホルモン受容体陽性、腋窩リンパ節転移陽性の乳癌術後患者にTAMを5年投与した場合の再発、死亡、子宮内膜癌の発生数などを、1,000人あたりで試算したものです。その結果、TAMの投与により152人が乳癌の再発を免れ、109人が死亡から救われることがわかります。一方、子宮内膜癌を発症する人は4人、子宮内膜癌によって死亡する人は1人増えるにすぎません。すなわち、TAMによる再発抑制効果は子宮内膜癌発生のハームをはるかに上回っているといえます。また、ホルモン受容体の測定が重要であることもあらためて確認されました。
最近は、わずかな確率で生じうる副作用のみを強調した報道によって、不安を抱いている患者さんも少なくありません。現在TAMを服用中の患者さんに対しては、こうした情報を正確に提供することが大切です。 |
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表 TAM5年間投与によるベネフィット(ER陽性、リンパ節転移あり) |
| 自然放射線 |
10年にわたって観察した症例1,000人あたりの発生数 |
| TAM投与群 |
コントロール群 |
差 |
| 乳癌の再発(初回) |
403 |
555 |
152 |
| 乳癌による死亡 |
386 |
495 |
109 |
| 対側乳癌 |
23 |
32 |
9 |
| 直腸癌 |
7 |
7 |
0 |
| 子宮内膜癌 |
6 |
2 |
−4 |
| 子宮内膜癌による死亡 |
1.7 |
0.4 |
−1 |
| 乳癌および子宮内膜癌以外による死亡 |
59 |
59 |
0 |
| Bandolier home pageより |
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| 参考文献 |
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| 1) |
Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group : Lancet 351:1451-1467, 1998 |
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