乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
乳がんとまぎらわしい病気には、どのようなものがありますか?
乳がんによく似たしこりができる病気もあります。
高橋かおる先生
(癌研究会附属病院乳腺外科)
坂元吾偉先生
(癌研究会研究所乳腺病理部部長)
乳房にしこりがみつかった場合、視触診やマンモグラフィなどの画像診断を受けることになりますが、なかには、乳がんとまぎらわしいしこりもあります。
その1つが「fibrous disease」で、そのしこりは硬くて形がでこぼこしていて、正常な組織との境目がはっきりしません。触診では乳がんと疑われることが多く、マンモグラフィや超音波の画像とあわせると、がんのようにもみえます。しかし、細胞をとるために針を刺すと非常に硬いのが特徴です。炎症によって組織が変化したものと考えられますが、糖尿病患者に発症することもあります。
また、「脂肪壊死」の場合も炎症が原因で腫瘍に似たしこりができます。豊胸手術や乳房温存手術後によくみられますが、打撲などによってできることもあり、はっきりした原因がわからない場合もしばしばです。弾力性はありますが、細胞をとるために針を刺しても手ごたえはなく、脂肪細胞などしか採取できません。
ほかに、しこりから細胞を取り出して調べても乳がんと見分けづらい病気には、「乳管内乳頭腫」「乳管腺腫」「乳腺症型線維腺腫」などがあります。
Fibrous disease→乳腺線維症
乳腺の一部が線維化、硝子化などの変化を起こす炎症性の病気です。比較的まれな病気ですが、超音波検査やマンモグラフィ検査で乳がんとまぎらわしい結果が出ることも多く、その場合は細胞診や組織検査での鑑別が必要です。
脂肪壊死
乳房の外傷などが原因で、炎症性のしこりができたものです。ただし、はっきりした外傷の覚えがなくてもおこることがあります。しこりは硬めで皮膚の陥没を伴うなど、乳がんとまぎらわしい場合もあります。細胞診や針生検で悪性ではないことが確認できれば、経過を観察します。
乳管内乳頭腫
乳頭の真下にある太めの乳管にできる良性のしこりです。乳頭から血のまじった分泌液が出ることがあり、分泌液の細胞診、乳管に造影剤を入れx線撮影を行うなどの検査によって乳がんと区別する必要があります。
乳腺症型線維腺腫
線維腺腫は病理組織検査によって得られた組織のようすから、管内型、管外型、乳腺症型の3種類に分類されます。このうち乳腺症型線維腺腫は、細胞のようすが複雑なことが多く、乳管内がんとの鑑別がむずかしい場合もあります。
乳癌診療Tips&Traps No.2(2001年9月発行)Question1を再編集しています。
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