乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
慢性乳腺炎とはどのような病気ですか?
症状が長引く乳腺炎の総称ですが、原因や病態はさまざまです。
芳賀駿介先生
(東京女子医科大学東医療センター教授)
慢性乳腺炎は、言葉の意味からすれば「細菌感染や化学的物理的な作用によって、軽度の発赤、腫脹、疼痛、発熱などの症状が長引く乳腺の病気」といえます。しかし、欧米では、原因や病態別に、以下に示すような個々の病気としてとらえられています。
乳腺拡張症/乳管周囲炎
おもな症状・所見:乳腺痛、乳頭分泌、乳頭陥凹、乳輪下腫瘤など。
乳輪の下の乳管がケラチンや分泌物で満たされて、広がった状態。乳頭の分泌物から高い割合で細菌が見つかるが、細菌感染が原因かどうかはよくわかっていない。
乳輪下腫瘍
おもな症状・所見:乳輪の下の痛みをともなう腫瘤、乳輪部の皮膚の発赤・腫脹、乳頭分泌ケラチンが乳管をふさぐことによって、膿瘍や瘻孔がつくられたもの。長期にわたって再発を繰り返すこともある。
肉芽腫性乳腺炎
おもな症状・所見:乳輪以外の部分の腫瘤、圧痛、乳汁分泌、腋窩リンパ節腫大。
乳輪以外の部分にできる小葉の炎症と肉芽腫性の病変。原因は不明で、しばしば乳がんと誤診されることがある。
結核性乳腺炎
おもな症状・所見:乳房腫瘤、潰瘍・膿瘍、瘻孔。
結核菌による乳腺炎。乳腺に原発したものと、肺結核からの二次性のものがある。
日本語では、慢性は急性の対になる用語であり、急性乳腺炎の症状が長引くと、安易に「慢性乳腺炎」と診断される傾向にありましたが、欧米と同様、病因や病態に応じて個別の疾患名で呼ぶことが提唱されています。いずれの疾患も比較的まれにみられる良性の乳腺の病気です。しかし、なかには治りにくく、乳がんとの見分けが難しい場合もあります。
もし「慢性乳腺炎」と診断されたら、上記のどの疾患にあたるのか担当医に尋ねて、自分はどのような病気なのか把握しておくことが大切です。
乳癌診療Tips&Traps No.16(2006年6月発行)Question2を再編集しています。
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