メニュー

本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

太った女性に乳がんが多い、という噂を耳にしましたが、本当ですか。

肥満(とくに内蔵型肥満)は乳がんの発症と関係があるという報告があります。

芳賀駿介先生
(東京女子医科大学東医療センター教授)

肥満と乳がんの関係については、閉経前と閉経後に分けて検討が行われていますが、BMI*の値が23.30以上の女性の場合、閉経後に乳癌リスクが上昇すると国内外からの報告があります。
これは、乳がんを増殖させる働きのあるエストロゲンが閉経前には卵巣でつくられるのに対し、閉経後は脂肪組織にある酵素がその産生にかかわっているためと考えられています。つまり、脂肪組織の多い肥満の人は、閉経後もエストロゲンがたくさん作られるので乳がんリスクも高まるというわけです。
閉経前に関しては、肥満と乳がんに関する見解はとくにみられません。しかし、体重の増加と乳がんの関係については、次のような研究もあります。
55歳以上の乳がんの患者さんのBMIや体重を18歳時のものと比較したところ、その増加率が高い人ほど乳がんのリスクが高まり、高齢になるほどその傾向が強くなる、というものです。乳がんの予後についてもBMIの値が高いほど不良であるといわれていますが、その原因のひとつには、肥満のために乳がんの発見が遅れがちになることも挙げられています。
そのほか、代謝のメカニズムから肥満と乳がんの関連を解明しようという研究では、メタボリック症候群にみられる代謝異常のうち、低HDLコレステロールが乳がんリスクを上昇させるという報告もあります。また、細胞から分泌されるアディポサイトカインという物質が、乳がんリスクや肥満女性の乳がんに影響を及ぼしている可能性も指摘されていますが、今後のメカニズムの解明が待たれるところです。
いずれにせよ、脂肪はメタボリック症候群と深に関連もあり、肥満には注意しましょう。

*BMI:Body Mass Index=体重と身長の関係から算出した肥満度を表す指数。
体重(kg)÷身長(m)2。日本肥満学会では、BMI22を標準、18以下をやせ、25以上を肥満としている。

乳癌診療Tips&Traps No.19(2007年6月発行)Question3を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。