メニュー

本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

高齢者が乳がんになると、温存させるのは難しいのでしょうか?

高齢者のほうが外科的治療における乳房温存療法の適応性が高いと考えられます。

岡南裕子先生
(癌研究会有明病院乳腺科)
岩瀬拓士先生
(癌研究会有明病院乳腺科部長)

高齢者の乳がんは転移が少なく、悪性度も低いものが多いのです。
高齢者乳がんの大きさをみると2センチ以下と小さく、乳管内に広がっている程度も軽度の症例が多いことが報告されています。さらに、リンパ節への転移も少なく、治りやすい乳がんが多いのも高齢者乳がんの特徴です。このため、高齢者のほうが外科的治療における乳房温存療法の適応性が高いと考えられます。
しかし、癌研有明研究所で根治治療が行われた人のうち(2004年1月~2006年3月)、55~59歳の閉経後の乳がんと、75歳以上の高齢者乳がんを比べると、高齢者乳がんは浸潤がんの中でも特殊な粘液がん、小葉がんの頻度が高いと報告されています。浸潤がんとは、がんが発生した乳管内にとどまらず、外側まで広がっているがんで、細いリンパ管や血管を介して転移する可能性も高いとされます。これに対し、非浸潤がんは、がんが基底膜を越えない早期のがんです。進行したがんが高齢者に多くみられるのは、マンモグラフィ検診や超音波検診の受診率が低いことが影響していると考えられます。
高齢になっても乳がんになる確率は下がらないのですから、定期的な自己検診と乳がん検診を怠らないようにしましょう。高齢者は乳腺組織が萎縮しているので、若い人よりも触診やマンモグラフィで乳がんを発見するのが容易です。そして、早期に発見することができれば、温存する確率も、予後も、良好になる確率が高くなります。

乳癌診療Tips&Traps No.18(2007年2月発行)Topicsを再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。