乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
線維腺腫と診断されました。治療の必要はありますか?
線維腺腫とはっきり診断されれば、多くの場合は治療の必要はありません。
野口眞三郎先生
(大阪大学大学院医学系研究科臓器制御医学専攻腫瘍外科学講座教授)
線維腺腫は、10~20歳代の女性によくみられる、乳房にしこりができる病気です。線維腺腫のしこりは境界がはっきりしていて、よく動くのが特徴です。
良性腫瘍に分類されることが多いのですが、この病気は腫瘍ではなく、正常な細胞が過剰に増えてできたもの(退形成)です。
線維腺腫は2~3cm以上に大きくなることは通常ありません。また、1/3~2/3ぐらいの割合で、自然に小さくなって目立たなくなることが知られています。10~20歳代のころに見つかった線維腺腫をそのままにしておいても、多くの場合、40~50歳代になるころにはしこりが気にならなくなります。
触診や超音波検査だけでも線維腺腫の診断を下すことは可能ですが、よく似た臨床像を呈する乳がんもまれにあるので、念のために細胞診を受けておきましょう。
細胞診の結果、線維腺腫とはっきり診断され、かつ、しこりが概ね3㎝以下の場合は、治療の必要はありません。6~12カ月に1回程度の検診を受けておけば安心でしょう。
しかし、しこりが3cm以上と大きかったり、40歳を超えている場合は、線維腺腫によく似た葉状腫瘍のことがあります。ですから、このような場合では、組織診(太い針でしこりの一部を削り取ったり、あるいは、しこり全体を切除したりする検査)が必要になることがありますので、ぜひ専門医に相談しましょう。
また、妊娠時に線維腺腫が大きくなることがありますが、通常は授乳が終われば自然に小さくなる場合がほとんどです。
線維腺腫→乳腺線維腺腫
10~20歳代の女性に多い、乳腺に良性のしこりができる病気です。しこりは境界がはっきりしていて、よく動きます。通常3cm以上の大きさになることは少なく、多くの場合は治療の必要はありません。
細胞診
「分泌液細胞診」は、乳頭から分泌された分泌液を採取して、そのなかに含まれる細胞の性質を顕微鏡で検査する方法。「穿刺吸引細胞診」は、細い針をつけた注射器でしこりを刺し、細胞を吸引して採取し、顕微鏡で検査する方法です。
葉状腫瘍→乳腺葉状腫瘍
乳腺葉状腫瘍の初期の臨床像は乳腺線維腺腫とよく似ていますが、乳腺葉状腫瘍には増大傾向があり、10㎝以上の巨大な腫瘍を形成することもあります。また、乳腺葉状腫瘍には良性と悪性があり、悪性のなかには全身に遠隔転移するものもあります。治療としては、しこりの大きさに合わせて乳腺部分切除、乳腺全切除、あるいは、単純乳房切除が実施されます。リンパ節転移はまれで、通常リンパ節郭清は不要とされています。
乳癌診療Tips&Traps No.5(2002年5月発行)Question1を再編集しています。
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