乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
加速乳房部分照射とは何ですか?
乳がんの手術後に、短期間で部分的に放射線を当てる治療方法です。
加賀美芳和先生
(昭和大学医学部放射線医学講座放射線治療学部門)
現在、乳房温存療法での放射線治療は、乳房全体に照射するのが一般的ですが、それとは別にがんが存在していた部位に放射線を部分的に短期間当てる治療方法もあります。それを「加速乳房部分照射(accelerated partial breast irradiation:APB I)」と言います。
APB Iの利点として、(1)正常な組織に放射線を当てることが減るため有害事象が少なくなる可能性があること、(2)治療期間が短いため通院回数も少なく、患者さんの負担が減ることが挙げられます。一方、危惧されることは、(1)放射線が当たらなかった部位から再発する可能性があること、(2)1回に当てる放射線量が多いため、治療終了後に何らかの障害が出る、または乳房の見た目や形へ影響を及ぼす可能性があることです。
APB Iは、乳房中でがんが再発する確率が、乳房全体に放射線を当てる治療方法と比べてほぼ同等であるという報告もあり、非常に期待されている治療方法です。しかしながら、まだ臨床試験段階であり、まだ明確になっていないことが多くあります。例えば、APB Iは乳房全体に放射線を当てる治療方法と比べて、合併症が多いのか少ないのか、その評価も一定していません。実際どのような患者さんに適しており、具体的にどのような治療のやり方が適切なのか、日本においてもさらなる検証が必要です。
乳房温存療法
乳がんとその周囲の乳腺組織を取る手術(乳房温存手術)の後に、取り切れていない可能性がある乳がんに対して放射線治療を行う方法
乳癌診療Tips&Traps No.41(2013年10月発刊)Topicsを再編集しています。
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