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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

術後のむくみがひどいときのよい対処法はありますか?

適切な治療で、約8割の浮腫が改善します。

吉原広和先生
(埼玉県立がんセンターリハビリ科)
武井寛幸先生
(埼玉県立がんセンター乳腺外科医長)
末益公人先生
(埼玉県立がんセンター乳腺外科部長)

乳がん手術後の腕のむくみは、腋窩リンパ節郭清や放射線療法による後遺症として、リンパ液の流れが悪くなることによって起こります(リンパ浮腫)。
リンパ浮腫は、早期から適切な治療を行えば約8割が改善します。基本となるのはおもに以下の4つの治療で、むくみの軽減をめざします。

スキンケア 皮膚の乾燥を防ぎ、感染や炎症を予防します。
マニュアル・リンパ・ドレナージ(マッサージ) リンパ管の活性を高め、正常なリンパ節に向かってリンパ液の流れを促します。ただし、揉み込むようなマッサージは禁忌です。
圧迫療法 専用の伸縮性の少ない弾力包帯を、指先からわきの下まで圧迫しながら巻きます。外出時などには、圧迫スリーブを利用します。
浮腫減退運動療法 上記で用いた圧迫包帯やスリーブをつけて、疲れない程度の決められた運動を行います。

自宅でも、(1)炎症があるときは冷やす、(2)浮腫のある腕を高くあげる、(3)こするようなマッサージを行う、(4)圧迫包帯やスリーブをできれば24時間着けたままにする、(5)腫れた腕を酷使しない、(6)波動型マッサージ器を補助的に利用する、などの方法で症状をやわらげることができます。
また、手術した側の腕のケガや感染、体重の増加はむくみの発症に関わっているといわれているので、これらにも注意してください。

腋窩リンパ節郭清

リンパ節は全身に点在するソラマメ状の器官で、リンパ液中の老廃物や細菌、がん細胞などをろ過する働きがあります。乳房に関係するリンパ節は、わきの下(腋窩)や鎖骨の下、鎖骨の上、胸骨の横にあり、がんが転移している場合は手術で取り除きます。リンパ節は脂肪組織の中に埋まるように存在しているので、周囲の脂肪組織ごと除去する手術が必要で、これを「郭清(かくせい)」といいます。乳がんは比較的早期の段階から腋窩リンパ節へ転移することが多く、治療上重要です。最近では、リンパ節郭清を行う範囲の縮小化が検討されるようになっています。

乳癌診療Tips&Traps No.4(2002年3月発行)Question3を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。