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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

手術した側の腕で荷物を持ったり、血圧を測定しないほうがよいですか?

腕がむくんでいるときは、重いものを運んだり、患部を下にして寝るのは控えて。

芳賀駿介先生
(東京女子医科大学第二病院教授)

乳がんの手術で腋窩リンパ節の郭清を受けた後は、むくみの症状がなくて腕の太さが正常であったとしても、リンパ液の還流(戻り)能力は十分とはいえません。このため、手術後にさまざまな生活指導が行われます。
まず、荷物を運ぶ場合ですが、腕の筋肉に流れ込む血液量が増加すると、リンパ液が戻りきれずに、むくみが悪化することがあります。手術後しばらくは、「よいしょ」と掛け声が必要となるような重いものは持たないほうがいいでしょう。
また、手術したばかりのころは患側を下にして寝ると、そこに体重がかかってリンパ液の戻りが悪くなります。むくみ症状が出ているときには、患側を下にして寝るのは避けたいものです。
その一方で、適度な運動は静脈血の戻りを促します。リンパ液の戻りも促してむくみの予防に役立ちますから、ゴルフ、水泳などの運動に取り組んでも大丈夫です。
手術をした側の腕にリンパ液がたまっているときに、傷が原因で細菌に感染すると、急に赤く腫れあがることがあるので、手指などにケガをしないように注意しましょう。
血圧測定で一時的に腕を締めつけたとしても、それがすぐにむくみを悪化させることにはなりません。血圧測定や注射などの医療行為に対して、さほど神経質になる必要はないでしょう。

腋窩リンパ節郭清

リンパ節は全身に点在するソラマメ状の器官で、リンパ液中の老廃物や細菌、がん細胞などをろ過する働きがあります。乳房に関係するリンパ節は、わきの下(腋窩)や鎖骨の下、鎖骨の上、胸骨の横にあり、がんが転移している場合は手術で取り除きます。リンパ節は脂肪組織の中に埋まるように存在しているので、周囲の脂肪組織ごと除去する手術が必要で、これを「郭清(かくせい)」といいます。乳がんは比較的早期の段階から腋窩リンパ節へ転移することが多く、治療上重要です。最近では、リンパ節郭清を行う範囲の縮小化が検討されるようになっています。

乳癌診療Tips&Traps No.8(2003年4月発行)Question1を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。