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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

乳がんの手術を受けた後でも出産はできますか?

できます。でも、年齢によっては、薬の副作用で閉経することも。

岩田広治先生
(愛知県がんセンター乳腺外科部部長)

乳がんの治療に使われるホルモン剤や抗がん剤のなかには、卵巣機能を低下させるものもあり、使用によって閉経状態となり、その後の妊娠がむずかしくなる場合もあります。
ホルモン療法では、LH-RHアナログを使用後、40歳未満であれば90%以上の人の卵巣機能が回復するとされていますが、40歳以上では回復率は約70%です。タモキシフェンでは、30歳代であればほとんど影響しませんが、40歳以上では閉経率が若干上がります。
化学療法では、20歳代ではCMF(シクロホスファミド+メトトレキサート+5-FU)を除けばほとんど影響はありません。しかし、30歳以上になると、CMFで30~40%、CEF(シクロホスファミド+エピルビシン+5-FU)やCAF(シクロホスファミド+ドキソルビシン+5-FU)では10~25%に閉経がみられます。つまり、30歳以上の女性にこれらの抗がん剤を使用すると、1/4~1/3の割合で治療後の妊娠がむずかしくなると考えられます。
一方、乳がん治療後の妊娠が、患者の生存率に悪影響をおよぼすことはありません。また、術後の抗がん剤やホルモン剤が、その後の妊娠・出産で奇形や流産、早産などに影響を及ぼすこともありません。
しかし、妊娠の時期については慎重でなければなりません。非浸潤がんの場合は、遠隔再発の危険性がほとんどないので術後早い時期の妊娠が可能です。しかし、浸潤がんの場合は再発の危険性を考えたうえで、妊娠の時期を慎重に判断したいものです。

LH-RHアナログ(LH-RHアゴニスト)製剤

閉経前の乳がんに用いられる薬で、卵巣から分泌されるエストロゲンを抑制します。閉経前の人がこの薬を用いると、体内のエストロゲンの量が減少し、乳癌の増殖が抑制されます。とくにエストロゲンレセプター(ER)をもつホルモン依存性の患者で高い効果が得られます。ほてり、肩こり、頭重感、発汗などの更年期症状が副作用として現れることがあります。

非浸潤がん

乳がんは、乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)の上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを、「非浸潤がん」といいます。

浸潤がん

乳がんは、乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内側)の上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを、「浸潤がん」といいます。

乳癌診療Tips&Traps No.10(2003年11月発行)Question3を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。