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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

乳房切除術後に放射線療法が必要なのはどんな時ですか?

しこりが大きかった患者さんや腋窩リンパ節転移が4つ以上の患者さんには手術後の放射線治療が勧められます。

平岡眞寛先生
(京都大学大学院医学研究科腫瘍放射線科学教授)

乳がん手術後の局所再発を左右するのは、「がんの大きさ」と「腋窩リンパ節転移の状態」です。腫瘍(しこり)の大きさが5cm以上、あるいは腋窩リンパ節への転移が4個以上の再発リスクが高いグループでは、局所再発率は20~45%に達します。しかし、化学療法やホルモン療法に放射線療法を加える治療が再発のリスクを下げることがわかり、これが勧められています。
従来より放射線療法はがん細胞を放射線で焼くことにより増殖を止めたり、破壊したりするので、局所や領域リンパ節への再発率を減少させることができるといわれていましたが、心臓や肺などの乳房周辺臓器への副作用から、生存率を高める効果は明らかではありませんでした。ところが、近年になって化学療法やホルモン療法に放射線療法とを組み合わせる併用療法によって、閉経前のリンパ節に転移がある患者の生存率が高まるという報告(表)が相次ぎました。米国腫瘍学会(ASCO)で策定されたガイドラインやわが国の乳癌診療ガイドライン(日本乳癌学会)でも、局所再発のリスクが高いグループ(腋窩リンパ節転移が4個以上)を対象に手術後の放射線照射を行うことが推奨されています。
なお、心臓や肺への放射線照射を避ける課題については、CTシュミレータ(CTスキャナ、治療計画用コンピュータ、レーザー投光器からなる高精度放射線治療計画装置)の導入で、改善が図られています。

(表)術後補助放射線療法の生存率
化学療法あるいはホルモン療法のみ +放射線療法
デンマーク:観察期間10年
(DBCG 82b trial/1997年)
45% 54%
カナダ:観察期間15年
(British Columbia Cancer Agency trial/1997年)
46% 54%
デンマーク:観察期間10年
(DBCG 82c trial/1999年)
36% 45%

乳癌診療Tips&Traps No.5(2002年5月発行)Topicsを再編集しています。

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