乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
アロマターゼ阻害薬を使うのはどのような場合ですか?
患者さんの状況に合わせて閉経後のホルモン療法に用いられる薬です。
岩瀬弘敬先生
(熊本大学大学院医学薬学研究部乳腺・内分泌外科教授)
閉経前の女性では、エストロゲンはおもに卵巣で合成されますが、閉経後は卵巣機能が低下するために、アロマターゼという酵素によって男性ホルモン(アンドロゲン)から転換されて合成されます。
アロマターゼ阻害薬は、アロマターゼの働きを抑えることでエストロゲンの合成を阻害する薬で、その作用メカニズムの違いよって(1)アロマターゼと結合することでその働きを妨げるタイプ、(2)アロマターゼの働きを完全に不活性化するタイプの2種類に分類することができます。
閉経後のホルモン受容体陽性乳がんに対する術後ホルモン療法として、アロマターゼ阻害薬を用いたさまざまな臨床試験が行われています。その結果、これまで術後療法の標準的治療として用いられてきた抗エストロゲン薬の5年間投与に劣らず、高い再発予防効果および遠隔転移予防効果が認められています。また手術直後から5年間使用する場合だけでなく、抗エストロゲン薬を2~3年投与した後にアロマターゼ阻害薬を使用して合計5年間治療を行った場合、さらに抗エストロゲン薬を5年間投与後にアロマターゼ阻害薬を追加した場合も、抗エストロゲン薬のみの投与に比べて再発予防効果および遠隔転移予防効果が増すという報告があります。
ホルモン療法の選択肢が増えたことで、個々の患者さんに応じて薬を使い分ける検討が始まっています。
乳癌診療Tips&Traps No.16(2006年6月発行)Topicsを再編集しています。
※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。