乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
なぜ、手術前に薬物療法を行うのでしょうか?
大きなしこりを小さくしたり、微小転移を根絶するために行われます。
渡辺亨先生
(浜松オンコロジーセンター長)
田原梨絵先生
(浜松オンコロジーセンター)
術前薬物療法には次のようなメリットがあります。
- 大きなしこり(がん)を小さくすることで、乳房の温存率が上がる
- 全身に広がっている可能性のある微小ながん細胞(微小転移)を根絶することができる
- 使用した薬の効果が確認でき、術後の治療方針決定に反映できる
乳がんの場合、薬物療法を手術前に行った場合と、手術後に行った場合を比較した臨床試験において、生存率に差がないという結果が示されています。したがって、手術前に薬物療法を行うことで手術の時期が遅くなっても心配することはありませんし、薬物療法の効果によりがんが縮小すれば、手術で切除する範囲が小さくなり、より美しい形で乳房を残すことが可能となります。
また、手術でがんを取り除く前に薬を使用するので、手術のときに薬の効果(がんの縮小)を目で確認することができます。がんが縮小していれば、抗がん剤が効くということですので、手術の後も抗がん剤による治療を継続していきます。
乳癌診療Tips&Traps No.26(2009年6月発行)Question1を再編集しています。
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