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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

術後にホルモン補充療法を受けることはできますか?

ほかの治療法を優先し、効果が得られない場合にはホルモン補充療法も考慮します。

園尾博司先生
(川崎医科大学乳腺甲状腺外科教授)

ホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)は、閉経後などのエストロゲン欠乏によって起きる症状をやわらげるために、エストロゲンを補充する治療法です。
わが国の乳がんの患者さんの半数以上は閉経後の人で、閉経前の人であっても術後の化学療法によって60~75%の人が閉経となります。つまり、乳がん患者さんの多くが術後にエストロゲン欠乏状態となり、ほてり、発汗、不眠、うつなどの更年期症状が現れる場合もあるのです。
エストロゲンは乳がんを悪化させる因子の1つであり、病状の悪化を招く危険性が考えられることから、これまでは乳がん患者にHRTを行うことはありませんでした。
ところが、最近では、さまざまな研究報告から、HRTを受けている場合でも乳がんの再発率に差は認められず、悪影響を及ぼさないと考えられるようになってきています。とはいえ、この集計には術後60カ月を過ぎてからHRTを受けた人も含まれているので、HRTについてはなお慎重に扱ったほうがよいともされています。
そこで、エストロゲン欠乏症状の緩和には、まずHRT以外の治療法を検討します。骨粗鬆症にはビスホスホネート製剤、高脂血症にはHMG-CoA還元酵素剤などが、HRTの代わりに用いられます。ほてり、発汗などの更年期症状には、自律神経失調治療薬や漢方薬を用いますが、これらが効かない場合には短期間のHRTを行うことになります。

エストロゲン(卵胞ホルモン)

女性ホルモンの1つで、乳がんの発生や増殖に深く関わっています。乳がんには、エストロゲンにより増殖するもの(ホルモン依存性)と、増殖にエストロゲンが関係しないもの(ホルモン非依存性)があり、この性質の違いは治療計画を立てるうえで大変重要です。ホルモン依存性の有無を調べるために、エストロゲン受容体(ER)の検査を行います。

骨粗鬆症

骨に含まれるカルシウムやリン、コラーゲンなどの量(骨量)が減って、骨の構造がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。閉経によって骨の形成を助けるエストロゲンの分泌が減少すると、骨粗鬆症を発症しやすくなります。

HMG-CoA還元酵素阻害薬

高脂血症治療薬の1つ。コレステロールの合成に必要なHMG-CoA還元酵素の働きを妨げて、細胞内のコレステロールを減少させます。すると、血液中のLDLコレステロールを細胞内に取り込むようになるので、結果的に血中LDLコレステロールが減少します。

乳癌診療Tips&Traps No.8(2003年4月発行)Question3を再編集しています。

※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。