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本サイトは医師を対象とした定期刊行誌「乳癌診療Tips&Traps(2001年9月~2015年9月発刊)」(非売品:大鵬薬品工業株式会社提供)の編集に携わる先生方を中心にたくさんの乳腺専門医にご協力いただきながら乳がんに関する情報をわかりやすくQ&Aやアニメーション形式で提供しています。掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。

乳がん Q&A

乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。

手術前に行う治療にはどのようなものがあるのでしょうか?

がんの性格や進行状況によって術前化学療法が広く行われています。

向井博文先生
(国立がんセンター東病院化学療法科)
渡辺亨先生
(国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授山王メディカルプラザオンコロジーセンター長)

乳がんの手術前に行う術前療法は、抗がん剤を用いる化学療法を中心に1970年代に始まりました。当時は、手術ができない局所進行乳がんや炎症性乳がんがおもな対象でした。80年代に入ると、手術ができる場合でも、手術前に乳がんを小さくして乳房温存術を可能にすることを目的に、術前化学療法が行われるようになりました。その後の研究や治療成績により、「乳がん細胞は、診断時にはすでに全身に広がっているので、なるべく早い時期から全身に効果の及ぶ治療を行うほうが有効である」との仮説に基づいて、さまざまな検討が行われました。
90年代になると、「術前化学療法により乳がんの縮小が認められるなら、全身に広がったごく小さながん細胞の根絶にも効果があると予測することができる」と考えられるようになり、術前化学療法の効果により大きな期待が寄せられるようになりました。
最近では、腫瘍径が1~2cmと小さい乳がんを対象に、さまざまな抗がん剤を組み合わせた臨床試験が行われています。その結果、術前化学療法によってがん細胞が縮小・消失すれば乳房温存率が高まり、また腋窩リンパ節への転移を予防する可能性が高くなることが明らかにされました。現在、術前化学療法は、乳がんの標準的な治療として、広く行われるようになっています。しかし、乳がんの種類や進行によっては術前化学療法の意義が乏しい場合があることもわかってきました。

乳癌診療Tips&Traps No.10(2003年11月発行)Topicsを再編集しています。

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