乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
女性ホルモンの影響が大きい乳がん。どんな乳がんにもホルモン療法は効果がありますか?
エストロゲンで増殖するタイプの乳がんにはホルモン療法の効果が期待できます。
佐野宗明先生
(新潟県立がんセンター新潟病院臨床部長)
乳がんの発生・増殖には、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを必要とするものと、そうでないものがあります。ホルモン療法の効果が期待できるのは、女性ホルモンによって増殖していくタイプ(ホルモン依存性)の乳がんで、約60~70%の患者さんがこのタイプです。
乳がんのホルモン依存性は、その組織の中にホルモン受容体(エストロゲン受容体:ER、プロゲステロン受容体:PgR)がどのくらい含まれているかによって判定しています。ER、PgRのどちらか一方があれば(陽性)、ホルモン療法の適応となります。
ホルモン療法は、エストロゲンの産生を抑制したり、エストロゲンとERの結合を阻止して、がん細胞の増殖を抑えます。手術後の治療としてホルモン療法を取り入れることで、再発の割合を50%程度低下させることができます。また、進行した乳がんや再発した乳がんでは、病気の進行を抑える効果が証明されています。
エストロゲン(卵胞ホルモン)
女性ホルモンの1つで、乳がんの発生や増殖に深く関わっています。乳がんには、エストロゲンにより増殖するもの(ホルモン依存性)と、増殖にエストロゲンが関係しないもの(ホルモン非依存性)があり、この性質の違いは治療計画を立てるうえで大変重要です。ホルモン依存性の有無を調べるために、エストロゲン受容体(ER)の検査を行います。
プロゲステロン
女性ホルモンの1つで「黄体ホルモン」とも呼ばれる。排卵から次の月経までの間(黄体期)に分泌され、排卵を抑制する。基本的にはエストロゲンを補足する役目を果たします。
乳癌診療Tips&Traps No.3(2001年11月発行)Topicsを再編集しています。
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