乳がん Q&A
乳がんに関する様々な疑問を乳腺専門医が分かりやすく解説しています。
乳がんの治療を続けています。経過は良好ですが、なぜか気分が落ち込みます。どうしたらよいでしょうか?
理由はさまざまだと思いますが、あまりにも辛いときは、主治医に相談してみましょう。
明智龍男先生
(名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学 准教授)
がんを患えば、どんな人でも少なからずストレスを感じるものです。病気や治療のこと、身体的な変化、経済的な問題や仕事の問題、あるいは家族のことなど。乳がん患者さんの精神症状に関する検討を行ったある研究結果をみると、積極的なケアが望まれる不安や抑うつ状態は手術後1~2年以内の患者さんでは10~30%、再発後の患者さんでは40~50%程度に認められることが示されています。
さまざまなストレスを抱えたまま生活していくことは、乳がんの患者さんでなくとも辛いもの。重い荷物を背負っていれば生活の質(QOL)も低下していきます。もし、病気のことで気分が沈んでどうしようもない、何をしても楽しくない、何にも興味がもてないなど(表)の精神状態が続くようでしたら、一度主治医に相談してみるとよいでしょう。ともによい解決策を検討し、よりよい生活を取り戻してください。
診断基準 | |
---|---|
(1)(2)のいずれかに加え、そのほか3~4項目(全部で5項目)以上の症状が2週間以上継続している場合は、主治医に相談してみましょう。 | |
(1)日常生活や社会生活上の問題となる抑うつ気分 | 気分が沈んで憂うつだ、落ち込む。 |
(2)興味・喜びの低下 | 何をしてもつまらない、何事にも興味がもてない、新聞やテレビにも興味がわかない。 |
(3)食欲低下(増加)あるいは体重減少(増加) | 食欲が出ない、何を食べてもおいしく感じられない、食餌療法をしているわけではないのに体重が著しく減少してしまう。 |
(4)睡眠障害 | なかなか寝つけない、寝つけても途中で目が覚め、その後眠れない。 |
(5)精神運動(精神的な働きによって生じる身体運動)性の焦燥または制止 | いらいらしてじっとしていられない、何かをしようとしても思うように身体が動かない。 |
(6)易疲労性または気力の減退 | 疲れやすい、だるい、気力が出ない。 |
(7)無価値感または罪責感 | 自分には何の価値もないとか周りに迷惑をかけているなどと感じてしまう。 |
(8)思考または集中力低下 | 物事を決めることができない、物事に集中できない。 |
(9)希死念慮 | 死んでしまいたい。 |
世界的に汎用されているうつ病の国際的な診断基準(米国精神医学会の診断基準)より
乳癌診療Tips&Traps No.28(2010年5月発刊)Question1を再編集しています。
※掲載された情報は、公開当時の最新の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、執筆者の所属・役職等は公開当時のもので、現在は異なる場合があります。